朝起きて、家族やパートナーから「昨夜、うなってたよ」と言われたのに、自分ではまったく記憶がない——正直「寝言じゃなくて?」と聞き返したくなりますよね。
睡眠中に無意識でうなり声を出す現象は「カタスレニア(睡眠関連うなり声)」と呼ばれ、いびきとはまったく違う仕組みで起きています。
私も以前、眠っている間に変な音を出していると指摘されて不安になったことがあります。調べてみると、声帯の仕組みやREM睡眠との関係など、知らなかった事実がたくさんありました。
💡 この記事でわかること
- カタスレニアとは何か——いびきとの決定的な違い
- 発生の81%がREM睡眠中に集中する理由
- 放置していいケースと、受診が必要なサイン
- 今日からできる3つの対処法とCPAPの有効性
「うなってるよ」と言われても気づかない理由——声帯が生み出す不思議な音
眠っている間に出る音は、すべてが「いびき」ではありません。
カタスレニアの音は、いびきとは発生の仕組みが根本的に異なります。
深い息を吸い、長くゆっくり吐きながらうなる
カタスレニアの呼吸パターンには明確な特徴があります。
まず深く息を吸い込み、次にゆっくりと長く息を吐きながら、その途中でうなり声のような音が出ます。
これが数秒から数十秒のサイクルで繰り返されます。
📊 研究データ
Yu M et al.(Physiol Meas, 2020)が23名・計3,728エピソードを分析。うなりの平均持続時間は11.4秒、最長で74.9秒に及ぶケースも確認された。
74秒というのは、1分以上うなり続けることもあるということです。
この数字を初めて見たとき、正直「そんなに長いのか」と驚きました。
重要なのは、本人はこの音にまったく気づいていないという点です。
パートナーや家族から指摘されて初めて知るパターンが圧倒的に多いとされています。
いびきとの決定的な違い——音が出るのは「吐く息」
「いびきも寝ている間に出る音だし、何が違うの?」と思う方も多いはずです。
いびきは「吸うとき」に振動する
いびきは、喉の奥にある軟口蓋(なんこうがい)や口蓋垂(こうがいすい)といった軟部組織が、吸い込む気流で振動することで発生します。
つまり音が出るのは主に「吸う」タイミングです。
カタスレニアは「吐くとき」に声帯が閉じる
一方、カタスレニアの音は声帯が能動的に閉じた状態(内転)で息を吐くことで発生します(Alonso et al., J Clin Sleep Med, 2017)。
声帯を使っているため、音には規則的な倍音(ハーモニクス)があります。
Yu et al.(2020)の音響解析でも、うなり声の波形は規則的・半規則的だったのに対し、いびきの波形はカオス的(不規則)だったことが確認されています。
🔑 重要なポイント
カタスレニアの音は「声帯が作り出す音」。いびきとは発生源も発生タイミング(吐く息)も異なる。音響的には規則的な倍音があり、専門家には明確に区別できる。
3つの「夜の音」を1枚で比較する
いびき・睡眠時無呼吸症候群(OSA)・カタスレニアの3つは「眠っている間の呼吸の問題」として混同されがちですが、仕組みがまったく違います。

上の比較をご覧いただくとわかるように、3つの状態はそれぞれ音の発生源・発生タイミング・酸素への影響がすべて異なります。
パートナーが録音してくれた音声を医師に聞いてもらうことが、診断への最短ルートになります。
REM睡眠の「夜後半」に集中する理由——脳と呼吸のメカニズム
起きているときは絶対にうならないのに、眠ると出てくる。この不思議さの裏には、脳の呼吸制御が関わっています。
発症は思春期〜20代——新生児の呼吸パターンが復活する仮説
カタスレニアの症状は、多くの場合思春期から20代の頃に始まるとされています(Vetrugno et al., Eur J Neurol, 2007では5〜16歳の発症が報告)。
大学の寮や軍の訓練施設など、他の人と同じ部屋で寝る機会に初めて指摘されるケースが多いようです。
成人後も自然に消えることは少なく、長年続く人が大半です。
新生児の名残り?「呼吸ドライブ異常」仮説
有力な仮説のひとつが、新生児期の呼吸パターンの名残り(vestigial breathing pattern)が睡眠中に再出現したものではないか、というものです(Vetrugno et al., 2007)。
新生児は呼吸のリズムが不規則で、吐く息に声帯が関与することがあります。
成長とともに通常は消えますが、眠っているときだけ古いパターンが復活する——という考え方です。
現在も解明途上のメカニズム
ただし、カタスレニアの発生メカニズムはまだ完全には解明されていません。
現在有力視されているのが「呼吸ドライブの異常」という概念で、脳幹にある呼吸中枢の制御が睡眠中に変化することが関与していると考えられています。
81%がREM睡眠中に発生するデータの意味
もうひとつの注目したい発見があります。
Drakatos P et al.(Sleep Med, 2017)が38名の患者を分析した研究では、カタスレニアの発生の81%がREM睡眠中に集中していることが確認されました。
カタスレニアの主要データ
81%
REM睡眠中に
集中して発生
11.4秒
うなりの
平均持続時間
74.9秒
最長で
1分以上続く
Drakatos et al., Sleep Med, 2017(38名分析)
Gómez et al., Pulmonology, 2020(8名中7名で消失)
参考:Yu et al., 2020 / Drakatos et al., 2017 / Gómez et al., 2020
Yu M et al.(2020)の研究でも23名のうち16名(70%)がREM優位型でした。
💡 豆知識
REM睡眠(急速眼球運動睡眠)は夢を見ている段階で、骨格筋の活動が抑制される一方、脳は活発に動いている状態です。夜が深まるほどREM睡眠は長くなるため、カタスレニアは「明け方に向かうにつれて起きやすい」傾向があります。
REMとノンREM睡眠の違いについてさらに知りたい方は、夢を見ている時は眠りが浅い?レム睡眠とノンレム睡眠の科学的真実とはもあわせてご覧ください。
パートナーが「明け方に特にうなりがひどい」と感じるとしたら、REM睡眠が夜後半に長くなるこのメカニズムが関係しているかもしれません。
「害なし」は本当か?見逃せない2つのケース
「身体的リスクはない」と聞いて安心しかけたところで、少し立ち止まってみましょう。
カタスレニアは国際的な分類(ICSD-3)で「単独症状・正常バリアント」として位置づけられています。
しかし研究を読むと、「完全に放置でいい」とは言い切れないケースがあることもわかってきます。
睡眠分断が日中のパフォーマンスに出ている可能性
カタスレニアが起きているとき、脳波にはEEGアロウザル(マイクロな覚醒反応)が同時に確認されています(Drakatos et al., 2017)。
本人の意識には上がらないけれど、睡眠が細かく分断されている可能性があるということです。
実際、カタスレニアの患者さんから「寝ても疲れが取れない」「日中に眠気がある」という訴えが少なからず報告されています。
慢性的な睡眠分断が日中のパフォーマンスや気分に及ぼす影響については、夜中目が覚める原因を解明!夜間頻尿の対策や再入眠困難のメカニズムでも詳しく紹介しています。
眠りの質への影響は本人が想像している以上に出ているケースがある——これがカタスレニアの見逃せないポイントです。
「睡眠の質が落ちているかも」と感じていても、体感だけでは判断しにくいですよね。睡眠ステージを記録して「見える化」することで、カタスレニアの影響を客観的に把握できる可能性があります。
OSAが隠れているかを見分けるセルフチェック
カタスレニアと睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、同時に存在するケースがあることが近年の研究で指摘されています(Buyse B et al., Sleep Medicine, 2023)。
以下のセルフチェックで、あなたの状態を確認してみてください。
セルフチェック
カタスレニア+OSA合併リスクの確認
① 日中に強い眠気があり、会議中や車の中でうとうとしてしまう
② 朝起きると頭が痛い、または口が乾いている
③ パートナーから「呼吸が止まっていた」と言われたことがある
④ 肥満傾向がある(BMI 25以上)または高血圧・生活習慣病がある
⑤ 夜間に何度もトイレで目が覚める
3つ以上当てはまる場合は、専門医への相談を検討してみてください。
また、睡眠の質が慢性的に落ちていると感じる方は、睡眠が浅い原因と改善方法|深睡眠を増やす4つの対策も参考になるかもしれません。
🔑 重要なポイント
「命に関わらない」は正確だが「完全に無害」とは言い切れない。睡眠分断による質の低下、OSAとの合併の可能性——これらを踏まえて判断することが大切。
今日からの対処法と、病院に行くタイミング
「うなり声を止めたい」という気持ちと、「パートナーへの申し訳なさ」——その両方に対してできることがあります。
カタスレニアには確立された薬物療法はありません。
これまでにクロナゼパムやトラゾドンなどが試みられましたが、効果は不十分だったと報告されています。
一方で、いくつかのアプローチが症状の改善に役立つ可能性があります。
生活習慣でできる3つのアプローチ
✅ 今夜から実践できること
- 横向き寝を習慣にする:仰向けは上気道が狭くなりやすく、声帯周辺の気道が圧迫されやすい姿勢です。抱き枕を使うと姿勢が安定します。
- 腹式呼吸を1日5〜10分:Alonso et al.(2017)のレビューでは、深呼吸エクササイズ・ヨガ・ミオファンクショナルセラピーが症状軽減の候補として言及されています。
- 就寝・起床時刻を毎日一定にする:体内時計が整うとREM睡眠のリズムが安定し、症状が落ち着くケースがあります。
カタスレニアへの対処
段階別アプローチ
STEP 1:今夜から
横向き寝を習慣化する
仰向けでは舌根・軟口蓋が重力で沈下し上気道が狭くなります。横向きに寝ることで声帯周囲の気道が開きやすくなります。抱き枕を使うと姿勢が安定します。
STEP 2:毎日の習慣に
腹式呼吸エクササイズ(1日5〜10分)
鼻からゆっくり4秒吸い、口からゆっくり8秒吐く練習を毎晩就寝前に。深呼吸練習・ヨガ・ミオファンクショナルセラピーが症状軽減の候補として報告されています。
STEP 3:REM睡眠を安定させる
就寝・起床時刻を毎日一定にする
カタスレニアはREM睡眠中に集中します。体内時計が整うとREM睡眠のリズムが安定し、症状が落ち着くケースがあります。週末も含めて起床時刻を変えないのがポイントです。
症状が続く場合
専門医に相談(CPAP / 口腔内装置)
CPAP療法では8名中7名でうなり声が消失(Gómez et al., 2020)。口腔内装置(MAD)も代替候補として有意な効果が確認されています(Yu et al., 2021)。
参考:Alonso et al., 2017 / Gómez et al., 2020 / Yu et al., 2021
CPAP・口腔内装置で改善した報告
医療的な介入として最も報告例が多いのがCPAP(シーパップ)療法です。
鼻や口にマスクを装着し、一定の空気圧をかけることで気道を開き続ける装置です。
📊 研究データ
Gómez T et al.(Pulmonology, 2020)の研究では、カタスレニア患者8名にCPAP療法を実施。7名でうなり声が完全に消失し、全員が日中の不調の改善を実感した(平均改善度80/100)。
また、2021年にはYu M et al.が口腔内装置(マウスピース)をCPAPの代替として評価し、うなりの頻度に有意な減少が確認されています。
CPAPに比べると携帯性・受容性が高いため、CPAPが続けられない方の選択肢として注目されています。
診断の標準は「ポリソムノグラフィー」
カタスレニアの正式な診断には、ポリソムノグラフィー(PSG)と呼ばれる睡眠検査が標準です(Shakespeare & Parkes, J Sleep Res, 2025)。
呼吸センサー・脳波・筋電図・マイクを同時に記録し、うなり声が発生したときの体の状態を総合的に評価します。
🔑 病院に行くタイミング
日中の強い眠気・朝の頭痛・パートナーへの影響が続いている場合は、睡眠専門外来への受診がおすすめです。PSG検査でカタスレニアか否かを正確に診断でき、OSAとの合併有無も同時に確認できます。
🔑 睡眠の質を「見える化」する選択肢
カタスレニアが睡眠にどの程度影響しているかを知るには、睡眠ステージの記録が役立ちます。最近ではスマートリングで毎晩のREM睡眠比率や睡眠スコアを確認できるようになっています。
「睡眠トラッカーが自分に必要かどうか迷っている」という方に向けて、必要かどうかを5問で判定する記事をまとめています。
まとめ——「知ること」が、最初の一歩
カタスレニア(睡眠中うなり声)について改めて整理します。
- 深く吸って、長く吐きながら声帯がうなり声を発する現象
- いびき・OSAとはメカニズムが異なり、酸素低下はほぼ起きない
- 発生の81%がREM睡眠中、特に夜後半に集中
- 単独では命に関わらないが、睡眠分断やOSA合併の可能性は要確認
- 横向き寝・腹式呼吸・睡眠リズムの安定が基本の対処法
放置して問題がないとは言い切れませんが、まず大切なのは自分の状態を正確に知ることです。
録音してみる、パートナーに観察を頼む、日中の眠気や疲労感を振り返る——こうした小さな確認から始められます。
私自身、睡眠について調べるたびに「知らなかったこと」に出会います。すっきり眠れる日ばかりではないけれど、少しずつ改善している実感があります。横向き寝・腹式呼吸・睡眠リズムの安定——まずは1つだけ試してみてください。
次のステップを選んでください
💡 まず睡眠習慣から整えたい方:
睡眠が浅い原因と改善方法|深睡眠を増やす4つの対策
🔍 疲れがとれない原因を深掘りしたい方:
疲れているのに眠れないのはなぜ?脳の覚醒メカニズムと今夜から試せる10の解決策
よくある質問(FAQ)
よくある質問
参考文献
- Alonso J, Camacho M, Chhetri DK, Guilleminault C, Zaghi S. Catathrenia (Nocturnal Groaning): A Social Media Survey and State-of-the-Art Review. J Clin Sleep Med. 2017;13(4):613–622.
- Yu M, Wen Y, Xu L, Han F, Gao X. Polysomnographic characteristics and acoustic analysis of catathrenia (nocturnal groaning). Physiol Meas. 2020;41(12):125012.
- Drakatos P, et al. Catathrenia as a REM predominant disorder of arousal. Sleep Med. 2017;32:222–226.
- Vetrugno R, Lugaresi E, Plazzi G, et al. Catathrenia (nocturnal groaning): an abnormal respiratory pattern during sleep. Eur J Neurol. 2007;14(11):1236–1243.
- Gómez T, et al. Catathrenia resolved with the lowest CPAP pressure settings. Pulmonology. 2020;26(2):107–110.
- Shakespeare J, Parkes E. The role of home polygraphy sleep studies in the diagnosis of catathrenia. J Sleep Res. 2025;34(4):e14440.
- Buyse B, et al. Catathrenia and obstructive sleep apnea: a new phenotype. Sleep Medicine. 2023.
※本記事の執筆・構成にはAIを活用しています。掲載している研究データ・論文情報は公開済みの学術文献をもとに著者が確認・選定しています。記事内容は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。体の不調や医療上の判断については、必ず医師・専門家にご相談ください。
投稿者プロフィール
-
眠れない夜を、何年も繰り返してきました。
医師でも研究者でもない、ただの睡眠オタクです。
「なんとかしたい」という一心で本を読み漁っています。
完全には解決していないけれど、少しずつ朝が楽になってきた——そんな等身大の経験をもとに書いています。
専門用語はできるだけ平易に、エビデンスはできるだけ正確に。
「これ、私のことだ」と思ってもらえる記事を目指しています。
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