「また寝言言ってたよ」——朝ごはんを食べながらそう言われると、なんとなく気まずい気持ちになりますよね。
自分では気づいていない。でも誰かには聞こえている。そのギャップが少し恥ずかしくて、少し不安でもある。
実は、寝言は「恥ずかしい癖」ではなく、眠っている脳が何かを教えようとしているサインかもしれないのです。
わたし自身も睡眠データをつけ始めてから、「深睡眠が少なかった夜ほど寝言が多かった」という事実に気づいて驚いた経験があります。それをきっかけに論文を読み込んでみると、REMとNREMという睡眠ステージの違いによって、寝言の「中身」がまるで異なることがわかってきました。
💡 この記事でわかること
- REM睡眠とNREM睡眠で、寝言の言語的な特性が根本的に異なる理由
- 眠っている脳が「言葉を生む」神経メカニズムとストレスとの関係
- 寝言の増加が睡眠の分断を示すサインである可能性(最新研究より)
- 今夜から睡眠の質を整えて寝言を減らすための実践的な習慣
REMとNREMで、寝言の「中身」がまるで違う理由
「寝言はレム睡眠のときに出る」というのは、実は半分しか正しくありません。
寝言は、REM(レム)睡眠中にも、NREM(ノンレム)睡眠中にも発生します。
ただ、その「言葉の質」はステージによって根本的に違うということが、最新の研究で示されています。
NREM睡眠の寝言——脳が半覚醒する「数語の呟き」
NREM睡眠(Non-rapid eye movement sleep:ノンレム睡眠とも呼ばれ、「主に脳が休む眠り」を指します)には、浅い順にステージ1・2・3があります。
このうち特にステージ2(中程度の深さの眠り)では、脳が局所的に半覚醒状態になる瞬間があり、そのタイミングで発話回路が一時的に活性化することがあります。
NREM中の寝言には、次のような特徴があります。
- 語数が少ない(数語〜数十語程度)
- 文法が崩れていることが多い
- 否定形・命令形が多く出現する(「ちがう」「やめて」など)
- 夢の内容との一致率は40〜60%程度にとどまる
つまり、NREMの寝言は「脳が休もうとしているのに、部分的に起きてしまっている」状態の産物です。
REM睡眠の寝言——夢の中で続く「完全な会話」
REM睡眠(Rapid eye movement sleep:急速眼球運動睡眠とも呼ばれ、「脳が活発に動く眠り」を指します)の寝言は、NREMとは全く性質が異なります。
REM睡眠中は、脳は覚醒時とほぼ同じ活動をしています。同時に、手足の大きな筋肉は運動麻痺(アトニア:筋緊張が低下した状態)に入っているはずなのですが、発話に関わる口周りの筋肉は完全には抑制されないことがあります。
その結果、夢の内容がそのまま言葉として出てくることがあります。
📊 研究データ
REM睡眠中に寝言を言っているときに起こすと、「夢を見ていた」と答える割合はほぼ100%。一方、NREM中の場合は40〜60%程度にとどまることが報告されています(AllAbout・坪田聡医師, 2026年更新)。
468エピソードを分析してわかったこと
パリ・ピティエ=サルペトリエール病院のアルヌフ博士(Isabelle Arnulf)らの研究チームは、232名の寝言保持者を対象に合計468の発話エピソードを詳細に分析しました(Arnulf et al., 2017, Sleep誌)。
その結果、REM睡眠中の寝言は文法・語調・会話の「間の取り方」まで覚醒時と同等に保たれていたことが判明しました。
この数字を見たとき、思わず「これだったのか」と声が出そうになりました。
「会話しているのかと思ったら寝ていた」という経験がパートナーにある方も多いでしょうが、それはREM睡眠中の発話が文法的に完全だからなのです。
睡眠中の発話は、覚醒時の発話と構文・意味論的に同等であり、眠っている脳が高いレベルで機能できることを示唆している。
— Arnulf I et al., Sleep, 2017
睡眠の仕組み全体については、睡眠の仕組みを完全解説|レム・ノンレム・体内時計・脳の大掃除まででまとめて解説しています。
大人が寝言をやめられない——発話回路の「部分覚醒」とは
眠っている脳が「なぜ言葉を作れるのか」——そのメカニズムを理解すると、寝言への見方がガラッと変わります。
眠っている脳が言葉を生む仕組み
寝言の医学的な名称はソムニロキー(Somniloquy)といい、睡眠寄生症(パラソムニア:睡眠中に起きる異常な行動の総称)の一種です。
パラソムニアの多くは「REM睡眠中のみ」または「NREM睡眠中のみ」に生じますが、寝言はどちらのステージでも発生しうるという点で特殊です。
NREM睡眠で起きること
NREM睡眠中(特にステージ1〜2)、大脳皮質は通常「スローウェーブ」と呼ばれる低周波の脳波パターンを示し、意識は大幅に抑制されています。
ところが一部のニューロン(神経細胞)は「局所覚醒」と呼ばれる部分的な活性化を起こすことがあり、その対象が発話に関わるブローカ野(脳の言語産生領域)や運動野に及んだとき、無意識の発話が起きます。
このとき、夢を見ているわけではないことが多いため、発語の内容は日常的な断片や意味不明な呟きになりやすいのです。
ノンレム睡眠の詳しいメカニズムは、ノンレム睡眠とは|脳の老廃物を75%除去する驚異のメカニズムでも詳しく解説しています。
REM睡眠で起きること
REM睡眠中、脳は夢を見るために活発に動いています。同時に、脳幹(脳の最も下の部分で、生命維持に関わる基本的な機能を制御します)から「脊髄→筋肉」への運動指令を抑制する信号が送られ、四肢の大きな筋肉は麻痺状態(アトニア)に入ります。
これは「夢の内容をそのまま体で演じてしまわないための安全装置」です。
ただし、この麻痺は口周りの小さな筋肉には完全には及ばないことがあります。その結果、夢の中で誰かと会話しているシナリオがそのまま声として出てしまいます。
🔑 重要なポイント
REM睡眠の寝言は「夢を声で演じている」状態。NREM睡眠の寝言は「脳の一部が局所的に目覚めている」状態。どちらも睡眠の状態に何らかの乱れがあるときに起きやすくなります。
REM睡眠と感情処理の関係については、コア睡眠とレム睡眠の違い|感情の毒を抜く脳の仕組みとはもあわせてご覧ください。
ストレスがHPA軸を通じて寝言を増やす経路
「仕事が忙しい時期は寝言が増える気がする」——この感覚は、科学的にも根拠があります。
コルチゾールが睡眠構造を乱すプロセス
ストレスを感じると、脳の視床下部(ししょうかぶ)から始まる「HPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質系:身体のストレス応答を調節する神経・ホルモンの連鎖回路)」が活性化し、副腎からコルチゾール(主なストレスホルモン)が分泌されます。
コルチゾールには本来、夜間は分泌が低下するという概日リズム(体内時計に従った1日のリズム)があります。
ところがストレスが慢性化すると、夜間のコルチゾール分泌が高止まりし、深睡眠(NREM ステージ3)の比率が減少することが示されています(Pulopulos et al., 2020)。
深睡眠が浅くなると、ステージ1〜2の浅い眠りが増え、そこで起きる「局所覚醒」の頻度が上がります。これがストレスが多い時期に寝言が増えるメカニズムです。
📊 研究データ
Pulopulos et al.(2020)は高齢者76名の夜間コルチゾール変化を追跡。夜間のコルチゾール変化が小さいほど(HPA軸の乱れが大きいほど)主観的な睡眠の質が低いと報告しています。
ストレスと睡眠の詳しい関係については、ストレスで眠れない本当の原因とは?|今夜から断ち切る3ステップもあわせてご覧ください。
「寝言が増えた」は睡眠分断のシグナル——Camaioni(2022)の警告
寝言そのものは基本的に無害です。ただし、「増えてきた」という変化は、睡眠の質に何かが起きているサインかもしれません。
寝言が多い人の睡眠の実態
ローマ大学のカマイオニ博士(Milena Camaioni)らの研究チームは、寝言を持つ29名と健常対照者30名を7日間追跡する研究を行いました(J Clin Med, 2022)。
その結果、寝言を持つグループは健常者と比較して、自己報告の睡眠の質が有意に低かったことが示されました。
重要なのは、これが「寝言のせいで眠りが悪い」というより、「睡眠の分断(短い覚醒の繰り返し)が寝言を引き起こしている」という方向で解釈されている点です。
つまり寝言は「原因」ではなく「結果」として現れているサインである可能性が高いのです。
⚠️ 注意
「寝言がひどい」「暴れながら叫ぶ」「夢を演じるように体を動かす」といった症状がある場合は、RBD(REM睡眠行動障害:レム睡眠中に筋肉の麻痺が不十分になり、夢を体で演じてしまう疾患)の可能性があります。特に50代以上の方で症状が激しい場合は、睡眠専門医への相談をおすすめします。
なお、睡眠中に「うなり声」が出る場合はカタスレニア(睡眠中に出す呻き声)という別の現象の可能性もあります。睡眠中にうなる原因はカタスレニア|放置していいケースと対処法もあわせてご覧ください。
記憶の固定はどう影響を受けるか
さらにカマイオニらの研究では、寝言グループと対照グループで「記憶固定(睡眠中に情報を定着させるプロセス)」の差についても検討しています。
ウジュッコーニ博士(Uguccioni et al., 2013)の先行研究では、REM睡眠中の寝言に「その日に学んだ言語的な内容が再生されている」事例が確認されており、睡眠中の発話が記憶処理と連動している可能性が示唆されています。
これはつまり、睡眠の分断が進むほど「記憶の再生と定着」プロセスが乱れ、日中のパフォーマンスにも影響が出うることを意味しています。
💡 豆知識
寝言の発生頻度は生涯で70%近くの人が経験するといわれています。ただし「最近3ヶ月以内に経験した」という報告は17%程度(Sleep Foundation参照)。つまり、「たまになる」のは普通ですが、「頻繁に続く」場合は睡眠の乱れのサインとして受け取ってみてください。
寝言と眠りの関係に興味が出てきた方へ——「自分がどのステージで寝言を言っているのか、そもそも深睡眠が足りているのか」、実際にデータで見てみたいと思うかもしれません。『データで見る前に必要?と迷っている方に——判断材料をまとめた記事があります』
寝言を減らすために今夜からできること
寝言そのものを「止める」方法は現時点では存在しません。しかし、睡眠の質を底上げすることで頻度を減らせることが研究から示唆されています。
深睡眠(NREM Stage 3)の比率を保つ3つの習慣
NREM睡眠のステージ3(深睡眠・スローウェーブスリープとも呼ばれます)は、睡眠全体の約25%を占めるのが理想です。この比率が下がると、浅い眠りが増え、局所覚醒→寝言という連鎖が起きやすくなります。
習慣①:就寝時間を毎日±30分以内に揃える
深睡眠は主に「最初の90分」の睡眠サイクルに集中しています。就寝時間がバラつくと体内時計が乱れ、この最初のサイクルに入るタイミングがずれてしまいます。
休日に「寝溜め」をしたくなる気持ちはわかりますが、平日と休日の就寝時間の差を小さく保つことが深睡眠の確保につながります。
習慣②:寝室を18〜22℃に保つ
深睡眠に入るためには体の深部体温が下がる必要があります。室温が高すぎると体温が下がりにくく、深睡眠への移行が妨げられます。
就寝90〜120分前の入浴で体温を一度上げ、その後の放熱を促すことも有効です。
習慣③:アルコールを就寝3時間前以降に飲まない
アルコールは「眠りに落ちやすくする」一方で、REM睡眠を強く抑制し、後半の眠りを浅くします。後半の眠りが浅くなると、局所覚醒が増加し、寝言や中途覚醒が増えやすくなります。
✅ 今日から実践
- 就寝時間の「ズレ幅」を今週から±30分以内に揃える
- エアコンや扇風機で寝室を18〜22℃にセットしてから寝る
- 21時以降のアルコールを今夜から控えてみる
REM睡眠を乱さない就寝前ルーティン
寝言がREM睡眠中にも起きることを考えると、REM睡眠の質を整えることも重要です。
スマホは就寝1時間前にしまう
スマートフォンのブルーライト(短波長の光)はメラトニン(眠気を誘うホルモン)の分泌を抑制します。これにより入眠が遅れ、後半のREM睡眠の比率が下がってしまいます。
就寝前15分の「心配ごとの書き出し」
ストレスや不安が高まっているとHPA軸が活性化し、夜間のコルチゾールが高止まりします。就寝前に今日の心配ごとをメモに書き出すことで、脳が「処理済み」と認識しやすくなり、夜間覚醒が減る効果が複数の研究で示されています。
寝言とREM睡眠の関係をデータで確認する
「自分の睡眠ステージの比率が実際にどうなっているのか」を知ることで、改善の方向性が見えてきます。
🔑 重要なポイント
REM睡眠の比率やHRV(心拍変動:自律神経の安定度を示す指標)は、睡眠トラッカーで毎晩確認できます。「寝言が多かった日は深睡眠が少なかった」というパターンに気づけると、生活習慣の改善が的を絞りやすくなります。
「自分のデータを見てみようか」と感じている方は、睡眠ステージのデータを毎晩確認できるスマートリングの検討もおすすめです。まとめ後の関連記事カードをご覧ください。
夢とREM睡眠の関係について深く知りたい方は、夢を見てる時は眠りが浅い?レム睡眠とノンレム睡眠の科学的真実とはもあわせてご覧ください。
1夜の睡眠サイクルと寝言が出やすいタイミング
成人の平均的な7〜8時間睡眠を例に
NREM ステージ3(深睡眠)が最も長くなる。脳波はスローウェーブが支配的。寝言は少ない。
1回目のREM睡眠は比較的短い(10〜20分程度)。夢の内容を声に出す「REM型寝言」がまれに発生。
ステージ2(浅〜中程度)が増加。局所覚醒が起きやすくなり、NREM型の短い呟きが増えやすいタイミング。
⚠️ ストレスが高いとここで中途覚醒や寝言が集中しやすい
眠りが進むほどREM睡眠が延び、30分以上続くこともある。感情豊かで文法の整ったREM型寝言が最も出やすい時間帯。
💡 「朝方に複雑な寝言を言う」のはこのREM集中帯が原因
起床直前にREM睡眠から移行することが多い。パートナーに「さっき何か言ってたよ」と言われるのは、このREM帯の発話が記憶されているから。
出典:StatPearls – Physiology of Sleep, NIH / Arnulf et al., 2017
まとめ:寝言は「脳からのメッセージ」として受け取ってみよう
寝言とひとくちに言っても、NREMの眠りで出る「数語の呟き」とREM睡眠の中で出る「文法の通った会話」では、脳の状態がまるで違います。
そして、寝言の頻度が増えているとしたら、それは睡眠の分断が進んでいるサインである可能性があります。ストレス・アルコール・就寝時間のバラつき——こうした要因がHPA軸を乱し、深睡眠を削り、脳を半覚醒状態に追い込んでいることが多いのです。
睡眠データをつけ始めてから、わたし自身も「寝言が多い夜は深睡眠が少ない」というパターンに気づきました。「完全に解決した」とは言えませんが、就寝時間を揃えるだけで確実に変わるものがありました。
今夜から、寝言を「恥ずかしいもの」ではなく「脳が何かを知らせているサイン」として受け取ってみてください。
次のステップを選んでください
💡 まず生活習慣から整えたい方:
睡眠の質を上げる習慣まとめ|朝・日中・夕・夜の4ゾーン実践法
🔍 自分の睡眠データをまず見てみたい方:
【5機種比較】RingConn Gen 2が必要な人を5問で判定する方法
よくある質問
参考文献
- Arnulf I, Uguccioni G, Gay F, et al. What Does the Sleeping Brain Say? Syntax and Semantics of Sleep Talking in Healthy Subjects and in Parasomnia Patients. Sleep. 2017;40(11):zsx159. doi:10.1093/sleep/zsx159
- Camaioni M, Scarpelli S, Alfonsi V, et al. The Influence of Sleep Talking on Nocturnal Sleep and Sleep-Dependent Cognitive Processes. J Clin Med. 2022;11(21):6489. doi:10.3390/jcm11216489
- Alfonsi V, D’Atri A, Scarpelli S, Mangiaruga A, De Gennaro L. Sleep talking: A viable access to mental processes during sleep. Sleep Med Rev. 2019;44:12–22. doi:10.1016/j.smrv.2018.12.007
- Uguccioni G, Pallanca O, Golmard JL, et al. Sleep-Related Declarative Memory Consolidation and Verbal Replay during Sleep Talking in Patients with REM Sleep Behavior Disorder. PLoS ONE. 2013;8(12):e83352. doi:10.1371/journal.pone.0083352
- Pulopulos MM, Hidalgo V, Puig-Perez S, et al. Relationship between Cortisol Changes during the Night and Subjective and Objective Sleep Quality in Healthy Older People. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(4):1264. doi:10.3390/ijerph17041264
※本記事の執筆・構成にはAIを活用しています。掲載している研究データ・論文情報は公開済みの学術文献をもとに著者が確認・選定しています。記事内容は一般的な健康情報の提供を目的としており、特定の疾患の診断や治療を推奨するものではありません。体の不調や医療上の判断については、必ず医師・専門家にご相談ください。
投稿者プロフィール
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眠れない夜を、何年も繰り返してきました。
医師でも研究者でもない、ただの睡眠オタクです。
「なんとかしたい」という一心で本を読み漁っています。
完全には解決していないけれど、少しずつ朝が楽になってきた——そんな等身大の経験をもとに書いています。
専門用語はできるだけ平易に、エビデンスはできるだけ正確に。
「これ、私のことだ」と思ってもらえる記事を目指しています。
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